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やさしいにんじん

私の趣味と、てんてんのご飯用に、庭の一部で野菜を育てている。

てんてんが逝ってしまったのに、てんてん用に植えたにんじんは、この寒さにも負けず、美しい緑の葉を保ち、しっかりと実を太らせたままだ。

という訳で、てんてんの代わりに私が、このにんじんを食べているのだけど、信じられないくらいおいしい。
そういえば、てんてんは庭で育ったパセリであれば、どんなに具合が悪くても食べたクセに、市販のパセリの束なんて見向きもしなかった。
しみじみ納得。
にんじんは、ハーブのように香り、皮がピシリと張り詰め、実はホクホク甘い。

「土の恵み。自然の恵み」という言葉だけは、よく頭には入ってくるけど。
種から育て、見守り、にんじんを土から引き抜き料理し、食べると、その言葉を生身に知ることができる。
種は撒いたけど、このにんじんを育ててくれたのは、土と太陽と雨。
食べるのは、にんじんの命。
私はそれらに何の対価も払わず食べる。

現代社会の生活で、私は与えられている。恵まれている。と身に染みることは滅多にないと思う。
対価交換、取引が関係の主体だ。
お金を払うことで食べ物は手に入る。
人に気にいられるような自分であることで、愛をもらう。
何もかも。時には親の愛でさえも、この取引の対象だ。
その正体に無償を感じさせてくれるものはないに等しい。

にんじんを食べるとき。
「いただきます」という言葉が気持ちとぴったり寄り添って出た。

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