「悪を迎えるに徳をもってなす」寂聴さんのスピーチ

51歳で出家をなされた寂聴さん。
彼女の出家を、社会学者の上野千鶴子さんが本の中に、こう書かれていました。

「世を出る」ということは、皮肉なことに身を「世に捨てる」ことであったのだ。出家してからの彼女は、プライベートな時間など、殆どないように見える。
自分の時間を自分の為にではなく他人の為に使おうという決意のようなものが伝わってくる。世間から身を置くはずが、かえって世間にまるごと身をさらすことになるのが「出家」の逆説なのだろうか。

上野千鶴子「ミッドナイトコール」より。

上野さんが書かれているとおり、出家をなされて以来、滅私的に、人々の為に、日本国中を回られてきた寂聴さん。、
93歳のご高齢で、しかも病中にありながら、「戦争法案反対国会前集会」に駆けつけ、スピーチをなさいました。
身を持って体験した戦争の不条理、中国人の徳、若い人達への想い。。。
ホンの五分程のスピーチでしたが、寂聴さんの平和への願い、人々を愛する想いが伝わる熱いものでした。
「死んでもかまわない」との命をかけてのスピーチ。
最後の最後まで、その身を世の為に捨てようとする寂聴さんに、尊敬の念を込め、合掌いたします。

以下はスピーチの文字起こしをしたものですが、動画も素晴らしいのでご覧ください。

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瀬戸内寂聴です。
私は今年満93歳になりました。
おそらく、今日、たくさんの方がいらっしゃっていらっしゃいますが、私より年上の方はいらっしゃらないんじゃないかと思います。
私は去年一年病気をいたしまして、ずっと殆ど寝たきりでした。そしてそれが完全に治った訳ではありません。
けれども、色々、寝てまして考えましたけども、最近のこの状態は寝ていられないほどに私の心を痛めました。
そして、どうせ病気で死ぬか、あるいは、ここへ来て怪我をして死ぬかわかりませんけども、どうせ死ぬならば、こちらに来て一言でもみなさんにご挨拶をして「このまんまではダメだよ。日本は本当に怖い事になっているぞ。」ということを申し上げて死にたいと思ってきました。
私はどこにも属しておりません。誰にも話しておりません。
ただ、自分一人でやってきました。
だからもしも、私が怪我をしたり、何かかが起きて死んだりしても、それはあくまでも自己責任でございます。
そういう気持ちできました。だから怖いものナシです。
だから何でも言っていいと思ってまいりました。

私は1922年、大正11年の生まれですから、戦争の真っただ中で青春を過ごしました。
それで前の戦争がいかに酷くて大変かと言うことを身に沁みて感じております。
私は戦争中は北京にいましたから、終戦は北京で迎えました。
いかにその時に日本人が北京で威張っていたかということも見ております。
ですから、負けたと聞いた時には、もぅ、殺されると思いました。
しかし、こわごわと門を開いてみますと、向かいのホートン(路地)の壁に赤いレンタンがべたべたと貼ってありまして、それに書いてある言葉は「悪を迎えるに徳をもってなす。」という中国の言葉でした。
その時に私は「ああ、こういう国と戦争をして負けるのは当然だ。」と思いました。そして帰るまで、中国人からは酷い目にあったことはありません。
しかし、日本は本当に中国で酷いことをしておりました。
そういう事を全部見ておりますので、引き上げの苦労も何とも思いませんでした。
さて、帰ってきたら故郷の徳島は焼け野原でした。
そこから考えたことは、私はそれまでの教育でこの戦争は天皇陛下の為、あるいは日本の将来の為、あるいは東洋平和の為という風に教えられておりました。
戦争にいい戦争というものは絶対ありません。
戦争は全て人殺しです。殺さなければ、殺されます。
こんな事は人間の一番悪いことです。
ですからそういうことを二度と起こしてはならない。
しかし、最近の日本の情勢を見ておりますと、なんだか怖い戦争にどんどんと地近づいているような気がします。
ですから、せめて死ぬ前に、みなさんにそういう気持ちを伝えたいと思ってきました。
たから、どうぞ、みなさんは、ここへ集まった方々は私と同じような気持ちだと思います。
その気持ちを他の人達にも伝えて、特に和解人たちに伝えてください。
若い人たちの将来がしあわせになるような方に進んで欲しいと思います。
もう時間がこれですから、これ以上は話しはしません。
どうもありがとうこざいました。
ありがとうこざいました。


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